fc2ブログ
 

皆様、風邪などひかれませんよう温かくして、良い年末年始をお過ごしください!

妃アイコン


『株式会社エレファンテ所属、シナリオライターの妃ともる氏に同居人ができたようだ――』

当社にそんなタレコミが入ってきたのは、11月中旬のことだった。
新しいペットの飼育でも始めたのだろうか。
詳細を確認すべく、私はさっそく彼女をよく知る人物に接触を試みた。

~証言①~

運よく聞き込みに成功したのは、現在彼女と同棲中でもある
ピーチボーイさん 3才(仮名)だ。
ピーチボーイ


「妃氏に新たなフレンズ(同居人)が増えたというのは本当でしょうか?」

ピーチボーイさん
「はい、一緒に住んでいますよ。
 僕らとは居住スペースが違うので、交流はありませんが」


「なるほど。やはり本当だったのですね。
 一体、どのようなペットor人物なのでしょうか?」

ピーチボーイさん
「彼は、ペットではありません。
 フレッシュな食洗器(オス)ですよ」

食器洗いが苦手な彼女は、うまく食洗器の彼をゲットしたらしい。
しかし、ピーチボーイさんは声をひそめて、こう続けた。

ピーチボーイさん
「仲違いというわけではないようですが、
 やはり『入らない』ことに彼女は納得がいっていないようですね……」

“入らない”?
一体、どういう意味だろうか?

ピーチボーイさん
「いやね、彼女の子供(食器)に対して、
 彼がその……あまり快く思っていないみたいで……」

???
「ああ、フライパン(大)のことね……」

そう口を挟んだのは、となりのケージでくつろぐオレンジさんだった。

~証言②~
オレンジさん 3才(仮名)の証言によれば、
彼は契約同居人として、妃氏にレンタルされた食洗器であり、
まだ本命の彼(購入済み)ではないらしい。
オレンジ

オレンジさん
「いろんな食器を洗ってくれるし、
 すごく優しい人だって言ってたけど……。」

オレンジさん
「サイズ的に入らないとか言い訳いって
 フライパン(大)だけ、のけ者にするんだって」

小さいフライパンは洗ってくれるのにね、とオレンジさんはため息をつく。

オレンジさん
「問題はそれだけじゃないよ。
 自分の連れ子(食洗器専用洗剤)には甘いんだから」

ピーチボーイさん、オレンジさんの話から推測するに、
お互い連れ子との関係がうまくいっていない、ということだろうか。

より詳細な情報を知るべく、私は食洗器本人に突撃取材を試みた。

~証言③~
食洗器氏


「妃氏と同居しているという噂は本当でしょうか?」

マイクを向けられた食洗器氏は、明らかに動揺している。

食洗器氏
「あ、あの、いきなりなんですか?」

マイクを避けようにも、排水設備があるために逃げられないようだ。
私がなおも彼に迫ると観念したのか、ゆっくり語り出した。

食洗器氏
「同居していると言っても、レンタル期間は3週間ですから。
 それ以上の延長はありません」

契約同居であることは認めたようだ。
では、彼の連れ子に関してはどうのように釈明するのだろうか?

食洗器氏
「食洗器には、食洗器専用の洗剤が必要なんですよ……。
 ちゃんと専用のものでないと、故障する可能性がありますから」

やや苛立ったように彼は続ける。

食洗器氏
「連れ子だ、なんだって喚かれても、食洗器専用洗剤は、僕にとってなくてはならないものなんですよ。
だいたい、その事は契約時に彼女だって了承しているはずです」


「そうですか。ただ、あなたは彼女のお子さん――
 つまりフライパン(大)に対して、ずいぶんな態度を取っていたようですね?
 このことに対してはどのようにご説明を?」

食洗器氏
「ぼ、僕にだって許容サイズってものがありますから! 
 入らないものは、入らないんです!」

食洗器氏
「もういいですか……。あなたの相手なんてしていられません」

話すことはない、とでも言うように食洗器のスイッチが入った。
バシャバシャと水音がやけに大きく聞こえる気がする。

彼の言う許容サイズ――それは、心の器の大きさを言うのだろうか?
食洗器である彼と、妃氏の間にはすでに大きな溝が生じているようだ……。

そこから数日後、私は妃ともる本人と直接取材に成功した。
閑静な住宅街の道端で、大きな段ボールを抱え、よろめきながら歩く彼女は言う。


「今から彼をレンタル会社に返送するんです。
 今日で契約期間が終了するので」

縦約42cm、横約41㎝、奥行約38㎝、その重量は約14Kg……。
女性ひとりで抱えるには、さぞや重たいに違いない。


「フライパン(大)が洗えないとか、専用の洗剤が必要だったなんて、
 私にはどうでもいいんです」
 

「ただ、ひとつだけ心残りがあるとすれば――
 魚焼きグリルを洗っておけばよかったかなって……」

そう言って彼女は段ボールに視線を落とした。

食洗器氏
「………………」

段ボールの中の食洗器氏は一向に口を開こうとしなかった。
梱包された以上、お役御免、ということなのだろうか。

そうして彼女はまた、よろよろと歩き出した。
近くのコンビニで配送の手配をするのだろう。

時折、段ボールを降ろし、休憩を挟みながら歩く彼女の背は
なかなか小さくならない……。

食洗器のレンタル――という一大決心も虚しく、訣別を決めた彼女に
「魚焼きグリルも入らなかったと思うよ」とは、到底言えなかった……。

……。

…………。

今年度のエレ女ブログの更新は妃で最後になります。
また来年、お会いしましょう。
では~。